新海誠
宮崎から岩手まで全国を縫う『すずめの戸締まり』の中でも特に重要な地が神戸である。「神の戸」であり、未曾有の大地震があった場所。本作のテーマをクリティカルに表す場所。 三ノ宮は神戸のなかで自然の色が濃い。観覧車で戸締まりを行った摩耶山が隣接し…
令和六年6月18日、新宿に大雨が降った。火曜日。憂鬱な気分になるが今年は違う。この雨を待ち侘びていた。雨の言の葉の庭に行ける。 『言の葉の庭』は靴に人生を捧げる15歳の孝雄が、27歳の古典教師・雪野に靴を作る物語。孤悲を卒業し、愛に向かう。旅立ち…
プリマヴェーラ(春)が深まる5月。藤棚が見たくて言の葉の庭を訪れた。4連休初日。雲ひとつない青空。お日柄もよく、雨を主人公にした映画とは真逆の世界が広がった。9時の開園前から行列。近所のスタバで買ったコーヒーを手にゲートオープンを待っている。…
何年かに一度、東京に大雪が降るようになった。最初は上京してすぐの2014年。30センチ以上の積雪を記録した「平成26年の大雪」。これが登山家との出逢いを産んでくれた。大雪が降るたびに代官山の夜を思い出す。数年前から雪が積もったら行こうと決めていた…
新海誠のデビュー20周年にあたる令和四年に『君の名は。』の舞台を巡ってきた。新宿、諏訪湖。フィナーレを飾るのが飛騨古川。糸守町に最も近い町。「聖地巡礼ですか?」と訊かれるが、そうではない。新海誠が描く舞台は聖地ではなく”現場” そこに行けば何か…
『すずめの戸締り』の公開を前にして新海誠の過去作がIMAX上映された。9月30日(金)の初日、トーホーシネマズ新宿で『君の名は。』を観た。金曜13時でも満席に近い。学生が多いのはリアルタイムで観ていないからだろう。良いワインが時間を栄養にするように…
新海誠の第2作『雲のむこう、約束の場所』の舞台は本州最北端の東津軽郡・外ヶ浜町。令和4年に相次いだ自然現象を『天気の子』で予言していたと言える。8月3日の豪雨に見舞われた津軽半島の北端は土砂崩れにより津軽線がストップ。復旧の目処は立っておらず…
新宿を愛する新海誠は、新宿生まれの夏目漱石と似ている。夏目漱石のデビュー作が『吾輩は猫である』、新海誠の処女作が『彼女と彼女の猫』 「のんきと見える人々も、心の底をたたいてみると、どこか悲しい音がする」 吾輩は猫であるの一節は、ありふれた日…
『君の名は。』は高校生の男女の「入れ替わり」を通して「結び」を描いた新海誠の第6作。直前に制作されたZ会のCM『クロスロード』をプレリュードに様々な要素をクロスさせている。 ひとつが名前。「立花 瀧」と「宮水 三葉」。瀧は姓に植物、名に水があり、…
2022年は新海誠のデビュー20年目にあたり、『秒速5センチメートル』公開から15年が経つ。いまだこれを超えるアニメ映画は現れておらず、今後も現れないと思っているし、現れてほしくない。昨年も同じ「さくらの日」である3月27日に東京の舞台を訪ね歩いた。…
令和四年は6月に梅雨がなくなった。『天気の子』の公開から丸3年を迎えた7月19日は、各地を未曾有の大雨が襲った。まるで映画を再現したかのように。『天気の子』の舞台はすべて東京。これは新海誠の7作で唯一。主な舞台は新宿、池袋、田端、そして神津島。…
桜の季節になると『秒速5センチメートル』が観たくなる。毎日、目覚ましは『想い出は遠くの日々』。3月に入るとソワソワする。作品を見ることはもちろん、舞台となった場所も訪れたい。第2章『コスモナウト』は種子島だが、そのほかは新宿から近い。 代々木…
新宿に住んでいると6月が来るたび、梅雨より先に『言の葉の庭』が訪れる。新宿御苑を舞台に、15歳の孝雄と27歳の雪野の出逢いを描いた新海誠の第五作。 年上の社会人の女性に惹かれた学生という点で自分は孝雄と同じ。奈良から大阪の中学に通っていた中学3年…
新海誠の4作目『星を追う子ども』は、死と旅がテーマ。死はさらに大きなものの一部になることであり、人間は動物や植物の命を奪い、それを食すことで生きている。動物や植物は命を人間に捧げることで、別の大きな存在に変わる。生きる側も生を奪われる側も儚…
20年前の2002年2月2日。下北沢トリウッドで新海誠がデビューした。当時、劇場公開された唯一の映画館であり、南口商店街の路地裏に佇むわずか45席の小さな母胎。ようやく昨年から待ち望んだ『ほしのこえ』の記念上映が催された。銀河でいちばん好きな監督の…