シネマの流星

映画とは魔法。どこでもドアであり、タイムマシン。映画館の暗闇はブラックホール。スクリーンの光は無数の星たち。映画より映画館のファン

『民衆の敵』〜選ばなかった男ほど、遠くまで行ってしまう

『民衆の敵』(原題:The Public Enemy)は、1931年公開のアメリカ映画。 『犯罪王リコ』『暗黒街の顔役』と並び、成り上がりと崩落を、暴力の温度そのままに刻んだギャング映画の基準点である。 禁酒法時代のアメリカにおける犯罪組織での若者の台頭を物語…

『犯罪王リコ』〜光を欲しがった男は、影のまま終わる

『犯罪王リコ』(原題:Little Caesar)は、1931年公開のアメリカ映画。マーヴィン・ルロイ監督、主演はエドワード・G・ロビンソン。1920年代末から流行したギャング映画の“原型”のひとつであり、上へ上へと伸びた男が、最後に看板の影でしぼむまでを、80分…

『テキサスの五人の仲間』〜男の世界を壊したのは、一枚の札ではなく一人の女

『テキサスの五人の仲間』(原題:A Big Hand for the Little Lady)は、1966年のアメリカ映画。フィールダー・クック監督、主演はヘンリー・フォンダ。町の富豪5人が年に一度だけ行う高額ポーカーの“儀式”に、旅の一家が紛れ込むことで起きる騙し合いを描い…

『ニューヨーク・ニューヨーク』〜成功の歌が、恋を置き去りにする

『ニューヨーク・ニューヨーク』(原題:New York, New York)は、1977年のアメリカ映画。監督はマーティン・スコセッシ、主演はライザ・ミネリとロバート・デ・ニーロ。終戦直後のニューヨークを舞台に、サックス奏者と歌手が出会い、惹かれ合い、そして同…

『嘆きの天使』〜女は奪わない、ただ、男を壊す

『嘆きの天使』(独:Der blaue Engel/英:The Blue Angel)は、1930年製作・公開のドイツ映画。 ドイツ語のタイトルの「青い天使」は、物語の舞台となるキャバレーの名でもあり、主人公が落ちていく先に灯る看板の色でもある。権威と欲望、規律と歌、教壇…

『惑星ソラリス』〜SFの顔をした、最も私的な悪夢、宇宙の果てで、最も近いものに触れる

SF

『惑星ソラリス』(原題:Солярис/英題:Solaris)は、1972年に公開された旧ソ連映画。監督はアンドレイ・タルコフスキー。ポーランドのSF作家スタニスワフ・レムの小説『ソラリス』(邦題『ソラリスの陽のもとに』)を原作としながら、映画版は地球での長…

『市民ケーン』〜成功の果てに残る、ひとつの雪

『市民ケーン』(原題:Citizen Kane)は、1941年に公開されたアメリカ映画。監督・脚本・製作・主演をオーソン・ウェルズが務めた。25歳で撮ったデビュー作にして、映画史上最高傑作の一つと評される。新聞王チャールズ・フォスター・ケーンの死の謎「ロー…

『戦艦ポチョムキン』〜視線は撃たれる、見るという行為が変わる75分

『戦艦ポチョムキン』(英題:Battleship Potemkin)は、1925年に制作・公開されたソビエト連邦のサイレント映画。監督はセルゲイ・エイゼンシュテイン。長編第2作にして、「第1次ロシア革命20周年記念」として国家的に製作された作品である。 1905年に起き…

『暗黒街』〜撃つか、愛するか、影の中で人間は最も正直になる

『暗黒街』(原題:Underworld)は、1927年製作・公開のアメリカ映画。監督は『嘆きの天使』で有名なジョセフ・フォン・スタンバーグ。 史上初の本格的ギャング映画と呼ばれる。そして、その肩書き以前に、すでに「ギャング映画とは何か」を完成させてしまっ…

『暗黒街の弾痕』〜人生は一度きり、人は間違いのまま走り続ける

『暗黒街の弾痕』(原題:You Only Live Once)は、1937年製作・公開のアメリカ映画。フリッツ・ラングが渡米後に撮った2作目で、フィルム・ノワールの古典として語られる一本である。原題は「人生は一度きり」という意味。 後半の逃亡劇が『俺たちに明日は…

『暗黒街の顔役』〜最後に残るのは血だけ、世界はあなたのもの

『暗黒街の顔役』(原題:Scarface)は、1932年製作のアメリカ映画。ハワード・ホークス(共同クレジットでリチャード・ロッソン)監督、製作はハワード・ヒューズ、脚本はベン・ヘクト。禁酒法時代のギャング抗争を土台にしながら、上昇と破滅を“速度”で描…

『007/ゴールドフィンガー』〜金は物ではない、世界の“信じ方”である

『007/ゴールドフィンガー』(原題:Goldfinger)は、1964年公開のイギリス映画。イーオン・プロダクションズ製作の「ジェームズ・ボンド」シリーズ第3作で、原作は1959年に出版されたイアン・フレミングの同名小説。監督はガイ・ハミルトンで、監督した4本…

『007/ロシアより愛をこめて』〜撃つよりも誘え、最高傑作は、足し算ではなく均衡から生まれる

『007/ロシアより愛をこめて』(原題:From Russia with Love)は、1963年公開のイギリス映画。イーオン・プロダクションズ製作の「ジェームズ・ボンド」シリーズ第2作で、監督は前作に続きテレンス・ヤング。原作はイアン・フレミングの小説『007 ロシアか…

『007/ドクター・ノオ』〜スパイ映画の顔をしたボーイ・ミーツ・ガール

『007/ドクター・ノオ』(原題:Dr. No)は、1962年公開のアクション・スパイ映画。テレンス・ヤング監督、主演はショーン・コネリー。イーオン・プロダクションズ製作の「ジェームズ・ボンド」シリーズ第1作であり、ここから“ボンドという形式”が始まった。…

『炎の人ゴッホ』燃えて、消えて、最後に描いたのは、死という光

『炎の人ゴッホ』(原題:Lust for Life)は、1956年にアメリカで制作された伝記映画。原作はアーヴィング・ストーンによる同名の小説。実在の書簡と記録をもとに、画家ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの生涯、創作への執念を克明に描く。原題の「Lust for Lif…

『七年目の浮気』〜地下鉄の風がめくったのは、スカートではなく理性だった

『七年目の浮気』(原題:The Seven Year Itch)は、1955年公開のアメリカ映画。監督はビリー・ワイルダー。ジョージ・アクセルロッドのブロードウェイ舞台劇を、アクセルロッド自身がワイルダーと共同で脚色して映画化した。主演はトム・イーウェルとマリリ…

『大脱獄』〜自由よりも重い過去がある、雪原の先にある、もっと冷たい檻

『大脱獄』は、1975年4月5日に公開された東映映画。監督・脚本は石井輝男。主演は高倉健。そこに菅原文太が加わり、東映を代表する二人のスターがぶつかり合う、逃亡と復讐のハードボイルドである。網走刑務所を脱獄した死刑囚が、裏切った男たちを追いなが…

『ミッドナイト・エクスプレス』〜脱獄ではなく「再点火」、世界は広い、境界は痛い

『ミッドナイト・エクスプレス』(原題:Midnight Express)は、1978年公開のアメリカ映画。ビリー・ヘイズの回顧録(1977年)を原作に、脚本をオリバー・ストーン、監督をアラン・パーカーが担った。タイトルの「深夜特急」は「脱獄」を意味する隠語。 スタ…

『昼下りの情事』〜嘘で背伸びして、恋は同じ高さになる

『昼下りの情事』(原題:Love in the Afternoon)は、1957年公開のアメリカ映画。監督はビリー・ワイルダー。主演はゲイリー・クーパーとオードリー・ヘプバーン。クロード・アネの小説『アリアーヌ』を原作に、パリのホテル・リッツを舞台に「覗き見の恋」…

『紳士は金髪がお好き』〜ダイヤモンドは、欲望の免許証である

『紳士は金髪がお好き』(原題:Gentlemen Prefer Blondes)は、1953年公開のアメリカ映画。監督はハワード・ホークス。アニタ・ルースの小説を原作に、ブロードウェイ・ミュージカルとして磨かれた“女二人の航海”を、ミュージカル・コメディとして映画化し…

『アメリカン・ニューシネマ 反逆と再生のハリウッド』〜見えない影を、スクリーンに伸ばした季節

『アメリカン・ニューシネマ 反逆と再生のハリウッド』(原題:A Decade Under the Influence)は、2003年のアメリカのドキュメンタリー映画。監督はテッド・デミとリチャード・ラグラヴェネーゼ。1970年代の“ニューハリウッド”を、当事者たちの証言と膨大な…

『狂った果実』〜若さはブレーキの壊れた力、止まれない者たちの、逗子の夏

『狂った果実』は、1956年公開の日本映画。日活が“太陽族映画”として映画化した代表作で、監督は中平康、原作・脚本は石原慎太郎。逗子の夏、ヨットとボートと太陽の下で、兄弟と一人の女が出会い、欲望が速度に変わり、速度が破滅に変わっていく。青春映画…

『ナイアガラ』〜愛が所有に変わるとき、滝が鳴り始める

『ナイアガラ』(原題:Niagara)は、1953年公開のアメリカ映画。監督はヘンリー・ハサウェイ、主演はマリリン・モンロー、ジョゼフ・コットン、ジーン・ピーターズ。新婚旅行でナイアガラの滝を訪れた若い夫婦と、嫉妬と裏切りで崩れかけた夫婦という、二組…

『お熱いのがお好き』〜完全な人はいないまで逃げ切れ、マフィアから逃げて、恋に捕まる

『お熱いのがお好き』(原題:Some Like It Hot)は、1959年公開のアメリカ映画。監督・製作はビリー・ワイルダー。主演はトニー・カーティス、ジャック・レモン、マリリン・モンロー。禁酒法時代のシカゴを舞台に、マフィアの殺人現場を目撃してしまった二…

『アリスの恋』〜心の転居届、再出発はガソリン代から始まる

『アリスの恋』(原題:Alice Doesn’t Live Here Anymore)は、1974年公開のアメリカ映画。監督はマーティン・スコセッシ。日本では1975年に公開され、スコセッシ作品が初めて日本で劇場公開された一本でもある。原題を直訳すれば「アリスはもうここに住んで…

『フィスト』〜拳の熱、上昇と代償、勝つために変わり、変わりながら進む

『フィスト』(原題:F.I.S.T.)は、1978年公開のアメリカ映画。監督はノーマン・ジュイソン、主演はシルヴェスター・スタローン。架空の労働組合「全米州間トラック運転手連盟(FIST)」で、若き活動家が組織を巨大化させ、やがて自分の拳そのものに飲み込…

『太陽はひとりぼっち』〜日蝕のように恋は静かに暗くなる、世界は動き、恋だけが置き去りになる

『太陽はひとりぼっち』(原題:L’eclisse / 英題:The Eclipse)は、1962年(昭和37年)公開のイタリア・フランス合作映画。監督はミケランジェロ・アントニオーニ。「愛の不毛三部作」の一本で、恋が始まるはずの場所に、なぜか空白だけが増えていく感覚を…

『熱いトタン屋根の猫』〜妊娠の嘘は、愛の最後の爪、賑やかさは沈黙のカーテン

『熱いトタン屋根の猫』(原題:Cat on a Hot Tin Roof)は、1958年のアメリカ映画。テネシー・ウィリアムズの同名戯曲を、『暴力教室』のリチャード・ブルックス監督が映画化した。主演はエリザベス・テイラーとポール・ニューマン。大富豪の誕生日パーティ…

『かまきり夫人の告白』〜欲望の事故、幸福の頂点から崖が見える

『五月みどりのかまきり夫人の告白』は、1975年11月1日に公開された東映映画。監督は牧口雄二、脚本は安西英夫。主演は五月みどり。冷えきった結婚生活の中で欲求不満を募らせた女が、男たちを次々に誘惑し、そのたびに相手の運命を狂わせていく異色の官能ド…

『トラック野郎・突撃一番星』〜UFO飾りのトラックが、命を運ぶ夜

『トラック野郎・突撃一番星』は、1978年8月12日に公開された東映製作・配給の日本映画。「トラック野郎シリーズ」第7作で、主演は菅原文太、相棒は愛川欽也。1978年当時のSFブームを取り込み、一番星号にUFO飾りやパラボラアンテナまで載せてしまう、シリー…