宮崎から岩手まで全国を縫う『すずめの戸締まり』の中でも特に重要な地が神戸である。「神の戸」であり、未曾有の大地震があった場所。本作のテーマをクリティカルに表す場所。
三ノ宮は神戸のなかで自然の色が濃い。観覧車で戸締まりを行った摩耶山が隣接し、すぐ目の前が瀬戸内海と淡路島。山と海の自然の両方に囲まれている。神戸で鈴芽を導くのが二ノ宮ルミ。「二ノ宮」は舞台である二宮商店街を表す。『すずめの戸締まり』の旅は「登山」と「擬似家族」の2つだが、詳しくは2025年7月7日に発売する新海誠作品のレビュー本で記すのでここでは省略する。
令和6年(2024年)8月28日、野球取材のため三ノ宮を訪れる機会があった。駅前のロータリーはルミが鈴芽にスポーツキャップをあげる場所。ルミと出逢う前、愛媛で千果から私服をもらった。ルミは帽子。これが重要な意味を持つ。
そして新神戸駅から歩いて10分ほどの二宮商店街はルミのスナックがある場所。劇中では「九宮商店街」と架空の名前に変えていた。
左の建物がルミのスナックがあった場所。わずかな時間で鈴芽は物語のテーマとなる大きな経験をする。
- 双子の子守り
- スナックのママ
- 故郷の焼きうどん
3つに共通するものに気づいた人が観客の中でどれほどいたか。
映画の舞台を訪ねるたびに驚くのは、よくここを舞台に選んだということ。おそらく新海誠のセンサーに引っかかったというより、舞台に導かれたのだろう。それこそが新海誠が授かった最大の才能である。
ほしのこえを聴きに
雲のむこう、約束の場所の舞台を巡る
秒速5センチメートルの舞台を追う
星を追う子どもをつかまえに
言の葉の庭の舞台を巡る
君の名は。を逢瀬する
天気の子を見上げる
彼女と彼女の猫を巡る