『劇場版デジモンアドベンチャー』は、1999年に公開された細田守監督の短編アニメーション映画。テレビアニメ『デジモンアドベンチャー』の前日譚として制作され、シリーズの原点を描いた作品。細田守が商業アニメーション映画の監督を務めた初の作品であり、斬新な映像表現と独特の演出が話題を呼んだ。後に続く『ぼくらのウォーゲーム!』(2000年)とともに、デジモン映画シリーズの代表作。
スタッフ
- 監督:細田守
- 脚本:吉田玲子
- キャラクターデザイン:中鶴勝祥
- 作画監督:青山充
- 美術監督:飯島由樹子
- 音楽:有澤孝紀
- 声の出演:藤田淑子、坂本千夏ほか
- 制作:東映アニメーション
- 配給:東映
- 公開:1999年3月6日
- 上映時間:20分
あらすじ
ある夜、東京・光が丘の小さなアパートに住む兄妹、八神太一と八神ヒカリの前に、謎のデジタマが現れる。やがてデジタマから孵化したのは、見たこともない小さな生き物――ボタモンだった。
ボタモンは次々と進化を遂げ、ついには巨大な恐竜型デジモン・グレイモンへと姿を変える。しかし、そのとき、異次元からもう一体のデジモン――巨大な鳥型デジモン・パロットモンが出現。光が丘の住宅街を舞台に、二体のデジモンは壮絶な戦いを繰り広げる。
映画レビュー
細田守という固有名詞が躍動する夜明け前。東映アニメーション時代の映画監督デビュー作。20分の短編に無名の新人は伝説を刻んだ。
主人公・太一とヒカリの両親は登場するものの、その顔をはっきりと描かない。すなわち、子どもだけが住むネバーランドの世界の創造。視点はキャラクターの目線ではなく、観客の目線。映画は登場人物たちの物語であると同時に、観る者自身の物語となる。だからこそ、我々はこの映画と同じ時空を生きることができる。
生まれたばかりのデジモンは、猫にも負けるほど小さな存在。しかし、ほんの数分の間に驚くほどの進化を遂げる。この現象は、日々小さな革命を起こしながら成長していく子どもたちの姿とシンクロする。理屈や整合性を超えて、映画と子どもは同じ躍動を持つ。そして、繰り返し流れるラヴェルの『ボレロ』は、日常が実は冒険に満ちていることを、静かに、しかし力強く奏でる。最後にヒカリから太一に託される笛と同じく、アニメーションは映像ではなく音の芸術なのだ。
この映画に登場する2体のデジモンは、どちらが善でどちらが悪なのか、明確には示されない。むしろ、太一とヒカリと心を通わせるコロモンのほうが、街を破壊し尽くすヴィラン(悪役)に見える。その曖昧さこそが、細田守の世界観を際立たせている。
細田はラストで仕掛ける。エンディングに流れる和田光司の『Butter-Fly』。本来オープニングテーマであるはずの曲を、あえてエンディングに指揮。ボレロの繰り返しからの『Butter-Fly』へのバトンタッチ。終わりとは、何かの始まり。映画の世界が永遠にループし続ける。
"繰り返し"というテーマは、細田守の代名詞となる手法であり、その片鱗はすでにデビュー作で確立されていた。『Butter-Fly』は、細田守自身の飛翔のテーマソングである。
熱情をもって映画を作り、冷静に届ける。細田守は常に地平線の眼差しを持っている。だからこそ、細田守の作品は遠くまで届く。『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』『ワンピース THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』と続く航海の先に、細田守は「細田守」という大航海に乗りだす。
細田守の珠玉の地平線
ほしのこえを聴きに
雲のむこう、約束の場所の舞台を巡る
秒速5センチメートルの舞台を追う
星を追う子どもをつかまえに
言の葉の庭の舞台を巡る
君の名は。を逢瀬する
天気の子を見上げる
すずめの戸締まりを旅する
彼女と彼女の猫を巡る
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