
『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』は、写真界の巨匠・森山大道を追った2020年製作のドキュメンタリー映画。監督は岩間玄。2019年に「ハッセルブラッド国際写真賞」を受賞し、80歳を超えてなお現役で活動を続ける森山の姿に迫る。

1968年に刊行された伝説的デビュー写真集『にっぽん劇場写真帖』の復刊プロジェクトに密着し、その創作の舞台裏を記録。ファインダーを覗く森山の眼差しと、写真に宿る「いま」という刹那の力を浮かび上がらせる。国内外から熱烈な支持を集める森山の秘密に、映像が静かに切り込んでいく。
スタッフ・キャスト

- 監督:岩間玄
- プロデューサー:杉田浩光、杉本友昭、飯田雅裕、行実良
- 撮影:岩間玄
- 劇場公開日:2021年4月30日
- 出演:森山大道、神林豊、町口覚
- 配給:テレビマンユニオン
- 上映時間:107分
あらすじ

1968年に出版された『にっぽん劇場写真帖』は、戦後日本の雑踏を独自の視線で切り取った衝撃的なデビュー作だった。本作は、その復刊をめぐるプロジェクトを起点に、森山大道の現在を追う。カメラを手に街を歩く姿、過去の写真を前に語る横顔、編集者や仲間たちと交わすやりとりを記録しながら、森山が見つめる「時間」と「写真」の関係を描き出す。過去の名作を蘇らせる過程は、同時に未来への問いかけともなり、写真が持つ永遠の現在性を映し出していく。
映画レビュー

この映画は、語りすぎない。冒頭に菅田将暉の短いナレーションがあるだけで、あとは観客に委ねられる。過剰な説明を排し、森山大道の写真と行動、その空気に触れることでしか届かない領域へと導いていく。
森山は一眼レフも三脚も使わない。デジカメを片手に街を歩き、撮りまくる。フィルムかデジタルか、カラーか白黒かといった区分は意味をなさない。「カメラなんてコピー機。映りゃあいい」と笑いながら言う。そこには、機材や理論よりもまず「路上に立ち、世界と遭遇すること」への徹底した信頼がある。
80歳を超えた森山大道が、いまだに若者を惹きつけるのはその姿勢だ。磨き上げられた技術や効率化された機材にはない、生々しい“匂い”がそこにある。SNSにあふれる整った写真は数秒で忘れ去られるが、森山の写真は毒のように内臓に残る。無秩序な都市の表面を裂き、その奥に漂う感情や衝動を突き刺してくる。
タイトルにある「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい」という感覚も、理屈ではなく体感として迫ってくる。路上で切り取られる光景はすぐに過去になるが、写真として立ち上がった瞬間に、観る者の現在を更新する。その像はどこか未来の記憶のように、既に知っていたかのような懐かしさを纏う。
この映画が示すのは一つの真実だ。写真の答えは理論やアトリエにはなく、すべて路上にある。森山大道の歩く姿を追うことは、我々自身が「見るとは何か」をもう一度歩き直すことに他ならない。
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