シネマの流星

映画とは魔法。どこでもドアであり、タイムマシン。映画館の暗闇はブラックホール。スクリーンの光は無数の星たち。映画より映画館のファン

細田守『竜とそばかすの姫』ベルという野獣、鈴という真実

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『竜とそばかすの姫』は、2021年に公開された細田守監督の長編アニメーション映画。仮想世界《U》を舞台に、心に傷を抱える女子高校生・すずが、「歌姫ベル」として新たな自分を見つけていく。インターネット社会とリアルの交錯を描きながら、個のアイデンティティをテーマにした作品。細田守のアニメーション原体験となった『美女と野獣』から着想を得ている。

スタッフ

あらすじ

高知の田舎町に住む女子高校生・すずは、幼い頃に母を亡くして以来、自分を表現することができなくなっていた。だが、世界50億人以上が利用する仮想空間《U》の存在を知り、「ベル」というアバターで歌を歌うようになる。圧倒的な歌声と美しい姿により、ベルは瞬く間に世界的なスターとなった。

しかし、彼女の前に、謎めいた存在「竜」が現れる。荒々しくも孤独な竜に惹かれたベルは、彼の秘密を知るために動き始める。現実世界と《U》が交差するなかで、すずは竜の正体を突き止めようとするが、それは思いもよらない現実へとつながっていく。

映画レビュー

新海誠に出逢ったのが『君の名は。』だったように、細田守に巡り会えたのも第6作。同じ新宿のTOHOシネマズだった。

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舞台は高知。長野でも富山でもない。細田守は、東京からどんどん離れていく。GO LOCAL。

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『ウエストサイド物語』や『レ・ミゼラブル』『オペラ座の怪人』などミュージカル映画の舞台は都会が多い。だが、今作は田舎だから躍動する。ベルでなく鈴として高知で歌を取り戻す物語でもある。

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鈴は通学の際、坂を下る。登らない。日常に降りていく。戦場は山の上ではなく、下山後にある。

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時をかける少女』と同じく、川が多い。川は通学路であり、母親を亡くす場所。水は生命の源であり、母の命を奪う。二面性を見事に描く。

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お風呂は癒しの場。閉ざされたプライベート空間。お風呂にいるときだけ鈴は誰にも見せたことのない癒しの顔をする。仮想空間とは違う異世界。日常にも癒しはある。

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仮想空間「U」の世界。YouTubeを思わせるネーミング。『バケモノの子』で蓮と九太のふたつの人生があったように、鈴とベルのふたつを描く。歌声を失くした現実と、ディーバ(歌姫)として脚光を浴びるUの世界。現実の世界で輝けなくともフィクションの世界で生まれ変わる。

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本来、強さの象徴である竜をベルが守る構図にした妙。細田守逆張りで世界を構成する。美女と野獣にオマージュを捧げた本作も、『君の名は。』と同じくジェンダーの入れ替わりを描いている。SOSを求めるのは女性ではなく、男性(竜)。溺れそうな子どもを助けるのも強さの象徴である父親ではなく、鈴の母。そして、幼馴染の忍が母親がわりとなる。

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Uの世界には正義の印籠を振りかざす自粛警察もいる。現実とSNSの世界の境界線がなくなっている現代を見事に反映している。

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そして、美女と野獣では野獣が王子に戻るが、本作で魔法が解けるのは鈴。ベルという仮の姿(野獣)から本来の鈴に戻る。魔法を解く忍が美女(イケメン)。

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ベルの歌が胸を打つのは、承認欲求のマスターベーションではなく、そこに魂があるから。本当のフォロワーとは何かを問いかける。

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顔にそばかすのあるベルと背中に痣のある竜。ともに母親がおらず、父親と軋轢がある。SNSには誹謗中傷やしがらみがある一方で共鳴がある。共感ではなく共鳴。だから歌がテーマ。「鈴」という名前も音に関係する。画像

細田守は、本当につながることの意味を問う。だからラストシーンは、みんなで入道雲を見る。

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戦い、傷つき、スカーフェイス(傷のある顔)を抱えながら、それでも鈴は未来に推進していく。

細田守の珠玉の地平線

細田守を凌ぐアニメーション監督・新海誠

ほしのこえを聴きに

雲のむこう、約束の場所の舞台を巡る

秒速5センチメートルの舞台を追う

星を追う子どもをつかまえに

言の葉の庭の舞台を巡る

君の名は。を逢瀬する

天気の子を見上げる

すずめの戸締まりを旅する

彼女と彼女の猫を巡る

新海誠と新宿

新海誠もうひとつの世界

その他のアニメーション映画

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