
『冒険者たち』(Les Aventuriers)は、1967年に公開されたフランス=イタリア合作の冒険映画。監督はロベール・アンリコ。主演はアラン・ドロン、リノ・ヴァンチュラ、そしてヒロインのレティシアを演じるジョアンナ・シムカス。
ジョゼ・ジョヴァンニの小説『生き残った者の掟』第1部を原作とし、夢に敗れた二人の男と、未来を渇望する一人の女が、海底の財宝を求めて旅に出る。成功を掴んだ瞬間に崩れ落ちていく運命。その美しさと悲しさが、フランソワ・ド・ルーベのテーマ曲「レティシア」とともに胸に残る。
スタッフ

- 監督:ロベール・アンリコ
- 脚本:ロベール・アンリコ、ジョゼ・ジョヴァンニ
- 台詞:ジョゼ・ジョヴァンニ、ピエール・ペルグリ
- 原作:ジョゼ・ジョヴァンニ『生き残った者の掟』
- 製作:ジェラール・ベイトー、ルネ・ピニェア
- 音楽:フランソワ・ド・ルーベ
- 撮影:ジャン・ボフェティ
- 編集:ジャクリーヌ・メピエル
- 配給:SNC、大映
- 公開:1967年
- 上映時間:112分
音楽のフランソワ・ド・ルーベは、他にもアラン・ドロンの『サムライ』『さらば友よ』も手がけている。
キャスト

- マヌー・ボレリ:アラン・ドロン
- ローラン・ダルバン:リノ・ヴァンチュラ
- レティシア・ヴァイス:ジョアンナ・シムカス
ヒロインのレティシアを演じたジョアンナ・シムカスは、『夜の大捜査線』で主役の刑事を演じたシドニー・ポワチエと結婚し、映画界を引退した。
ローランを演じたリノ・ヴァンチュラは、『モンパルナスの灯』で悪徳な画商モレルを演じている。
あらすじ

自動車技師ローランと、その友人・パイロットのマヌー。二人は危険飛行企画に挑むが、罠にはめられ、マヌーは免許を失う。ローランも自作エンジンが爆発し、二人の未来は閉ざされる。
そんな彼らの前に現れたのが、彫刻家レティシア。初個展に失敗し、夢を失いかけていた。三人は互いの欠けた場所に触れ、ゆるやかに結びついていく。
そんな時、コンゴで沈んだ小型機に大量の宝が眠っていると知り、三人は冒険へ出る。海底で宝を発見するが、財宝を狙う外人部隊に襲われ、レティシアは命を落とす。
レティシアを海に葬った二人は、彼女の遺産を子どもに託し、故郷の要塞島へたどり着く。しかし外人部隊は二人を追い、要塞島で決戦となる。撃たれたマヌーは、ローランの腕の中で息絶える。二人は最後まで、レティシアという“夢の名”を胸に抱えたままだった。
映画レビュー:夢は手に入った瞬間に、もう失われ始める

『冒険者たち』を見終えると、胸に残るのは高揚ではなく、奇妙な静けさだ。この映画の美しさは、財宝を求める物語の中に、「夢は叶うと同時に崩れる」という、きわめて人間的な真実を置いている点にある。マヌー、ローラン、レティシア。三人の夢は、届いた瞬間に姿を変える。
ローランは技術で破れ、マヌーは空から落ち、レティシアは芸術に否定される。三人とも、夢に拒絶された者。拒絶された者たちが手を組んだ瞬間、三人の人生は動き出す。
夢を叶えるために旅に出たのではない。夢から追い出されたから旅に出た。冒険は希望ではなく、喪失のあとに訪れる。人生で本当に大きく動くのは、成功した時ではなく、すべてを失った時だ。この映画はその順番を正確に描いている。
レティシアという女性は、人物以上の存在だ。三人が抱えてきた夢の残り火。レティシアがマヌーに「要塞島で暮らしたい」と語るシーンがある。その島は、三人が到達できる唯一の未来像だ。彼女が死ぬと、三人の夢も終わる。夢は終わっても、憧れだけが残る。夢は死ぬが、憧れは死なない。レティシアとは、三人を動かし続ける“幻想”であり、最後まで消えない光なのだ。
海底の金塊は、三人の人生を変える鍵でありながら、同時に三人の“終わり”の引き金でもある。人生でも同じだ。大きな成功ほど、そのあとに静かで冷たい影を落とす。宝物は人を救うのではなく、人の弱さを照らす。

要塞島は、人生の行き止まりであり、楽園でもある。マヌーとローランが辿りつく要塞島は、奇妙な場所だ。
かつての戦争の武器が眠り、レティシアが住みたがった「過去と未来が混ざる場所」。
人は夢から降りたあとに、自分自身を獲得する。
瀕死のマヌーにローランは嘘をつく。「レティシアはお前と暮らしたいと言っていた」
マヌーは薄く笑い、「嘘つきめ」と言って息を引き取る。
この場面が映画の核心だ。三人の愛は三角関係ではない。もっと深い。自分より相手の夢を大事にする、“敗者同士の友情”が形になる瞬間。マヌーはレティシアを失い、宝も失い、未来も失う。それでも笑う。人は死の直前に、本当に大切なものしか受け取らない。その“最後の受け取り”が、ローランの嘘だった。夢の残り火のような、小さな温かさだった。

『冒険者たち』とは、「夢が壊れたあとに始まる人生」を描いた映画である。冒険は成功のためにあるのではなく、喪失を受け入れるためにある。
夢は叶った瞬間に崩れ、友情は絶望の中で成熟し、愛は死とともに形を変える。
監督は、三人が失ったものではなく、三人が“最後に手にしたもの”を静かに見つめている。海の底で見つかった財宝より、最後に残るのは、他人のためについた一つの嘘、それを笑って受け取った男の静かな誇り。
この映画は、冒険のスリルの形を借りながら、人生の“真の冒険は、夢が終わったあとに始まる”ことを教えてくれる。
その残響は、フランソワ・ド・ルーベのテーマ曲「レティシア」によって、いまも胸の奥で沈みながら輝いている。
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