俳優論
木村拓哉のCMが凄いのは、商品と一体化し、自らの細胞を消費者に気づかれないように変えらているからだ。NikonのCMがわかりやすい。フルサイズでは剛健、入門一眼レフでは冒険心、デジカメでは家庭的と、そのカメラに合わせて眼光と眼差しを変えてきた。カメ…
ある映画メディアの編集長とお酒を飲む機会があった。好きな女優を聞かれ、吉岡里帆と答えたのだが、容姿が美しすぎるせいで過小評価されている。吉岡里帆の演技の質は木村拓哉と同じ。多くの役者は役に近づこうとするが、吉岡里帆や木村拓哉は自分の中に役…
2013年に上京したとき7ヶ月間ニートだった。その間に観たのが新宿のプラネタリウムで上映していた『桐島、部活やめるってよ』。あのとき東出昌大が見せてくれたものは、その後の何年間かの僕を動かしてくれた。強い者を唯一超えられるのが弱者。それを東出昌…
人生は出逢いと喪失がグルグル回る車輪。平行移動でも垂直移動でもなく流転。地球という母胎で繰り広げられる回転運動だ。 映画『とべない風船』は瀬戸内海の島が舞台。平成の広島豪雨によって妻と息子を亡くした憲二(東出昌大)は庭先に息子との想い出の黄…
2016年『アリーキャット』から7年、最高純度にして最高密度の窪塚洋介が帰ってきた。真骨頂である「透明な怒り」「漆黒の桜」「真っ赤な雪」をスクリーンに刻みつけてくれた。 監督の牧賢治は商業デビュー作。普段は会社員をやっている。これまでは借金をし…
『トップガン マーヴェリック』が公開された。続編の製作を聞いた4年前、登山の先輩と雪山に向かう車の中で、何度この話をしたことか。 無事に雪山を下りて新宿へ帰る車内、生還の証に『Top Gun Anthem』を流す。明日を勝ち獲った瞬間を祝して。 大学生の頃…
松田龍平は『まほろ駅前』シリーズの行天春彦のように、透明の濃い俳優だ。夏の陽炎のように、砂漠の蜃気楼のように、掴みどころがないのに存在感が強い。ボーッとしているようで、内側を見透かす半眼はチベットで見た仏像を思い出す。 『まほろ駅前狂騒曲』…