シネマの流星

映画とは魔法。どこでもドアであり、タイムマシン。映画館の暗闇はブラックホール。スクリーンの光は無数の星たち。映画より映画館のファン

アニメ

高畑勲『かぐや姫の物語』人間であることの痛み、人間の泥を愛せるか

『かぐや姫の物語』は、2013年に公開された日本のアニメーション映画。監督は高畑勲。原作は日本最古の物語文学『竹取物語』。古典に新たな命を吹き込み、少女の誕生から別れまでを詩情で描いた、スタジオジブリの異色作。日本のアニメ映画としては破格の、…

ルパン三世は風と共に去りぬ─『カリオストロの城』が描いた女性としてのルパン

『カリオストロの城』の本編は冒頭の4分のみ。炎のたからものが終わるオープニングまで。冒険の舞台であるカリオストロ公国に向かう旅情こそが作品の心臓であり、ロードムービー。目的地に到着するまでが浪漫。 「旅とは風景を捨てること」と言ったのは寺山…

宮﨑駿『もののけ姫』赦しなき世界の中で、それでも

『もののけ姫』は、1997年に公開された日本のアニメーション映画。原作・脚本・監督は宮﨑駿。中世日本を思わせる神話的な世界を舞台に、人間と自然、文明と精霊の対立の中で葛藤する若者アシタカと、森に生きる少女サンの邂逅と闘いを描いた叙事詩。 スタッ…

新海誠『秒速5センチメートル』13歳で止まった桜色のラプソディ

『秒速5センチメートル』は、2007年に公開された新海誠監督の長編アニメーション作品。『ほしのこえ』『雲のむこう、約束の場所』に続く3作目であり、"会えない"ことをテーマにした3部構成のストーリー。主題歌には山崎まさよしの「One more time, One more …

宮崎駿『魔女の宅急便』〜ホウキにまたがる自由と自立

『魔女の宅急便』は、1989年に公開された日本のアニメーション映画。監督・脚本は宮崎駿、原作は角野栄子の同名児童文学。魔女の血を受け継ぐ13歳の少女キキが、満月の夜に故郷を発ち、海辺の都市コリコで「魔女の宅急便」を開業しながら、自立と共同体のあ…

宮崎駿『君たちはどう生きるか』遺言ではなく、未完成の宣言

『君たちはどう生きるか』は、2023年に公開された日本のアニメーション映画。監督・脚本は宮﨑駿。タイトルは吉野源三郎の同名小説から借りられているが、内容は直接の翻案ではなく、宮崎自身の少年時代や戦争体験を下敷きにしたオリジナル作品である。死別…

宮崎駿『風立ちぬ』雲は消え、線は身体に刻まれる、設計図の外に残された愛

『風立ちぬ』は、2013年に公開された日本のアニメーション映画。原作・脚本・監督は宮﨑駿。実在の航空技術者・堀越二郎と、作家・堀辰雄の小説『風立ちぬ』に着想を得て、激動の時代を生きた若者の夢と愛を描いた叙情詩的ドラマ。零戦の設計者として知られ…

宮崎駿『天空の城ラピュタ』愛は落下の最中に現れる、崩れ落ちる城で生まれる未来

『天空の城ラピュタ』は、1986年に公開された日本のアニメーション映画。原作・脚本・監督は宮﨑駿。少年と少女が出会い、伝説の浮遊都市「ラピュタ」を巡って繰り広げられる冒険を描いた空想科学ファンタジー。高度な科学文明と滅びの物語を背景に、空への…

宮﨑駿『ハウルの動く城』〜未来は未完成のまま歩く、愛とは欠けを映すこと

『ハウルの動く城』は、2004年に公開された日本のアニメーション映画。監督は宮﨑駿。イギリスの作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズの同名小説を原作に、魔法と戦争の世界を舞台に、老婆の姿に変えられた少女ソフィーと魔法使いハウルの出会いと心の変容を描…

今敏『東京ゴッドファーザーズ』〜現代の祭壇画、救済はゴミ捨て場から始まる

『東京ゴッドファーザーズ』は、2003年に公開された日本のアニメーション映画。監督は今敏(こん さとし)。前作『千年女優』とは一転し、現実世界を舞台にしながらも、偶然と奇跡が交錯するハートフルな群像劇となっている。クリスマスの夜、東京の片隅で暮…

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?〜青の境界線、ガラス玉に閉じ込めた夏

『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』は、2017年に公開された日本のアニメーション映画。監督は新房昭之(総監督)と武内宣之(監督)。原作は1993年に岩井俊二が手がけたテレビドラマおよび1995年公開の劇場版。舞台と登場人物を現代風に再構築…

『名探偵コナン 業火の向日葵』アートの迷宮が世界を燃やす

『名探偵コナン 業火の向日葵』は、2015年に公開されたシリーズ第19作目の映画。美術とミステリーが交差する異色のアート・サスペンス。物語の鍵を握るのは、ゴッホ《ひまわり》。世界中から集められた「7枚目のひまわり」をめぐり、怪盗キッドとコナンが対…

『ゴッホ 最期の手紙』魂はどこまで歩いていけるのか

『ゴッホ 最期の手紙』(原題:Loving Vincent)は、2017年にポーランドとイギリスの合作で制作されたアニメーション映画。世界初となる“全編油絵アニメーション”によって、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの死の真相に迫るミステリードラマ。1万5000枚以上の…

『SING/シング』声なき者の詩、月はまた昇る

『SING/シング』は、2016年に公開されたアメリカのアニメーション映画。擬人化された動物たちが繰り広げる歌のオーディションを通して、それぞれが抱える悩みや夢に向き合うミュージカル。僕の友人の人生ベストムービー。 スタッフ 監督:ガース・ジェニン…

今敏『千年女優』狂気と調和、演じるのはヒロインではなく映画監督

『千年女優』は、2002年に公開された日本のアニメーション映画。監督は今敏(こん さとし)。長編第2作。引退して久しい伝説の女優・藤原千代子が、自身の人生を語りはじめると、物語は映画と現実を縦横に行き来し、彼女の“人生の旅”と“恋の追憶”が壮大な映…

今敏『PERFECT BLUE』アニメは“嘘”を超えられるか

『PERFECT BLUE』は、1998年に公開された日本のアニメーション映画。監督は今敏(こん さとし)。これが長編デビュー作。原作は竹内義和の小説『パーフェクト・ブルー 完全変態』。アイドルから女優へと転身する主人公が、現実と幻想の狭間で次第に心を蝕ま…

近藤喜文『耳をすませば』逃げられない夢への一本道。全部“カントリーロード”のせいだ

『耳をすませば』は、1995年に公開された日本のアニメーション映画。原作は柊あおいの同名漫画。監督は近藤喜文、脚本・製作プロデュースを宮﨑駿が担当。多感な中学生の少女・月島雫と、ヴァイオリン職人を目指す少年・天沢聖司の出会いを描いた青春ドラマ…

宮﨑駿『紅の豚』抗わない反逆者の物語

『紅の豚』は、1992年に公開された日本のアニメーション映画。原作・監督は宮﨑駿。自らの短編漫画『飛行艇時代』をもとに、第一次世界大戦後のアドリア海を舞台に、人間に戻ることを拒んだ豚の賞金稼ぎポルコ・ロッソの孤独と誇り、そして空を巡る戦いとロ…

大友克洋『AKIRA』血と鉄と魂の黙示録

『AKIRA』は、1988年に公開された日本のアニメーション映画。原作・監督は大友克洋。自身が手がけた同名の漫画『AKIRA』をベースに、第三次世界大戦後の荒廃した未来都市「ネオ東京」を舞台に、超能力を巡る陰謀と少年たちの運命を描く。 スタッフ 監督:大…

『神々の山嶺(Le Sommet des dieux)』なぜ登るのか?その問いの果てにあるもの

『神々の山嶺』(原題:Le Sommet des dieux)は、2021年に公開されたフランスのアニメーション映画。夢枕獏の小説、および谷口ジローの漫画『神々の山嶺』を原作とし、孤高の登山家・羽生丈二と、彼の謎を追うカメラマン・深町誠の物語を描く。エベレスト初…

細田守『竜とそばかすの姫』ベルという野獣、鈴という真実

『竜とそばかすの姫』は、2021年に公開された細田守監督の長編アニメーション映画。仮想世界《U》を舞台に、心に傷を抱える女子高校生・すずが、「歌姫ベル」として新たな自分を見つけていく。インターネット社会とリアルの交錯を描きながら、個のアイデンテ…

細田守『未来のミライ』未来は飛び越えず、迎えに行け

『未来のミライ』は、2018年に公開された細田守監督の長編アニメーション映画。初めての妹が生まれたことで両親の愛情を奪われたと感じる少年・くんちゃんが、未来からやってきた妹・ミライちゃんとの出会いを通して成長していく物語。家族の歴史やつながり…

細田守『バケモノの子』人は生まれながらにして二刀流、半世界を超えて

『バケモノの子』は、2015年に公開された細田守監督の長編アニメーション映画。人間界とバケモノ界の狭間で生きる少年・九太と、粗暴だが心優しいバケモノ・熊徹の師弟関係を描く。孤独な少年が成長していく過程で、親子の絆やアイデンティティの葛藤をテー…

細田守『おおかみこどもの雨と雪』花が咲き、雨が降り、雪が舞う、空には入道雲

『おおかみこどもの雨と雪』は、2012年に公開された細田守監督の長編アニメーション映画。おおかみ男と人間の女性の間に生まれた「おおかみこども」の姉弟、雪と雨の成長を描く。母親・花の視点を通して、子どもたちが「人」として生きるか、「おおかみ」と…

『ロボット・ドリームズ』映像美に宿る感情と、物語の弱点

『ロボット・ドリームズ』は、2023年に公開されたスペイン・フランスのアニメーション映画。1984年のニューヨークを舞台に、ひとりぼっちの犬とロボットの友情を描いた作品である。セリフを排し、ビジュアルと音楽だけで物語を紡ぐ手法が特徴。 スタッフ 監…

細田守『サマーウォーズ』完全結晶、すべての地図はここに通ず

『サマーウォーズ』は、2009年に公開された細田守監督の長編アニメーション映画。インターネット上の仮想世界「OZ」を舞台に、数学が得意な少年・小磯健二と、長野の旧家・陣内家の面々が世界の危機に立ち向かうSF青春アニメ。『時をかける少女』(2006年)…

細田守『時をかける少女』未来への坂道を駆け下りる

『時をかける少女』は、2006年に公開された細田守監督の長編アニメーション映画。筒井康隆の同名小説を原案としつつも、物語は原作の続編的な位置づけとして制作された。主人公は原作に登場する芳山和子の姪・紺野真琴。彼女が偶然手にした「タイムリープ」…

細田守『劇場版デジモンアドベンチャー』世界を変えた20分の革命

『劇場版デジモンアドベンチャー』は、1999年に公開された細田守監督の短編アニメーション映画。テレビアニメ『デジモンアドベンチャー』の前日譚として制作され、シリーズの原点を描いた作品。細田守が商業アニメーション映画の監督を務めた初の作品であり…

新海誠『すずめの戸締まり』が開く新たな扉

『すずめの戸締まり』は、2022年に公開された新海誠監督の長編アニメーション映画。『君の名は。』(2016)、『天気の子』(2019)に続く新海誠の監督作であり、喪失と再生をテーマにした壮大なロードムービー。『星を追う子ども』(2011年)以来の女性を主…

新海誠『彼女と彼女の猫』雨音とモノローグの中で

『彼女と彼女の猫』は、1999年に新海誠が日本ファルコムに勤めながら自主制作した短編アニメーション。新海誠が監督・脚本・作画・美術・編集をすべて一人で手がけた、まさに「すべてが新海誠」の作品である。5分間のモノクロ映像で綴られる、猫の視点から描…